データの公開レベル分類
つくば市 家中賢作、朝日航洋株式会社 新井千乃
編著者:

行政機関等における庁内のデータ利活用においては、自部署のデータを他部署に共有することが重要となりますが、ど のデータが庁内で利用可能なのかは不明確な場合が多く、利活用検討の妨げとなっています。
データスペクトラムの概念に基づくデータの公開レベル分類ワーク(オープンデータ公開に向けたワーク)は、データには公開・非公開だけでなく、庁内での限定公開といった区分もあることを学び、それらも含めた公開レベルを設定する方法を身に付けることが可能です。これにより、庁内の共有データを増やし、利活用を促進することを目指します。
ODI(Open Data Institute)が提唱したデータスペクトラム(Data Spectrum)とは、データの公開範囲やアクセス制限に応じてデータを分類するフレームワークです。データの開放性に応じて、クローズドデータ(Closed Data)、共有データ(Shared Data)、オープンデータ(Open Data)の大きく3つのカテゴリに分類されます。
■ツールレベル ※フレームワーク自体のレベルではありません
初級
■意義・特徴
行政機関等のデータをデータスペクトラムに準じて公開レベルを検討すると、図のとおり4種の公開レベル(部署内限定、庁内限定、請求による公開、オープンデータ)に分類できると考えられます。本ツールは、この公開レベルにしたがって、実際にデータに対して分類を実施します。
本プレイブックでは、5つのデータの分類の在り方についてじっくり検討し、短時間で理解を深めるタイプのワークを紹介します。
■活用シーン
主にデータ公開の判断を行う管理職向け と想定していますが、実務担当者にとっても有用な知識です。データ分類の判断力を備えた管理職が増え、より多くのデータが庁内で共有されることで、行政機関等の幅広い部門の職員にとっての選択肢が広がることが期待されます。
■前提・留意事項
データについて公開レベルを検討するため、機関ごとの条例や規定等におけるデータ公開に関する規定の知識が役に立ちます。
■使い方
添付の教材を利用し、以下のようなワークショップを運営します。
(ワークの流れ)
進め方は次のとおりです。
1 行政機関等のデータは4種の公開レベル(部署内限定、庁内限定、請求による公開、オープンデータ)に分類できることを参加者に伝えます。
2 ワークシート(図)に示されたデータについて、公開レベルを検討し、付箋貼付欄に公開レベル別に色分けされた付箋(部署内限定:赤、庁内限定:黄、請求による公開:緑、オープンデータ:青)を貼っていきます。付箋は1つに限らず、該当するものが複数あれば全て貼って構いません。
3 根拠・検討基準欄に、付箋を貼った理由を記入します。根拠となる法律や条例を確認します。条例は機関によって当然異なるため、最終的な結果や判断は機関ごとに異なります。

図:データの公開レベル分類のワークシート
4 根拠・検討基準についてグループでディスカッションを行います。
意見が分かれやすいデータの例として「航空写真画像データ」が挙げられます。国土地理院の見解や、個人情報となる基準について言及されたもの(後述「参考文献」参照)もありますので、これらを参考に、各機関のオープンデータの取組方針を踏まえて判断します。
ここで、「航空写真画像データ」 について特に注意すべきことは、各機関のHPで公開しているからといってオープンデータとは限らない、ということです。航空写真画像データはライセンスがオープンデータではないケースが多いので、利用規約を確認しておくことが重要です。
公開データ≠オープンデータであることを理解しておくことが重要です。
(参考時間配分)
15分~
(利用する教材)
用意するもの
データ分類の材料(例:住民基本台帳データ、地番図データ、避難行動支援者名簿、市が保有する航空写真画像データ、農業委員会委員名簿)
データ分類のワークシート 図のように、付箋を貼る欄、考えをメモする欄を用意しています。
付箋4色
■実績・有用性
本プレイブックで紹介するツールは、つくば市のデータ利活用研修や地方公共団体で展開しているワークショップ(「データトリアージ研修」)で長年の実績があり、繰り返し改善を重ねてきたものです。行政機関のデータ利活用において、データは、一般公開できるデータ/できないデータの2種類のみに分類されるわけではないことを認識することが重要です。
特に、一般公開できないデータのうち、庁内で共有できるデータを増やすことが、行政機関におけるデータ利活用の普及につながると考えられます。
■次のステップ
(アドバンス研修・実習)
データクレンジング:オープンデータの条件である、機械判読性のあるデータの重要性と作 成方法を学ぶことができます。
(参考文献とその概要)
国土地理院 地理空間情報における個人情報の取扱い・二次利用促進に関するガイドラインについて(空中写真の利用・提供推進の考え方):
https://www.bousai.go.jp/jishin/kyouyuu/wg/04/5-2.pdf
【関連情報】
■関連ケーススタディ
■関連フレームワーク
データスペクトラム
■関連スキル
データマネジメント
■著作者・連絡先
つくば市 家中賢作
朝日航洋株式会社 新井千乃
■掲載年月日
2025年3月31日
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