■ツールレベル ※フレームワーク自体のレベルではありません
1)テンプレートの直接活用:初級 2)テンプレートのカスタマイズ:上級
■特徴
業務標準ガイドラインは、業務の標準を言語化することで業務改善を促進するためのフレームワークです。本プレイブックでは、文書関係業務、セミナー等関係業務、庁内会議の業務標準をテンプレートとして掲載しています。
したがって、これらの業務について業務改善を行う場合にはテンプレートをそのまま活用することが可能です(テンプレートの直接利用)。
その上で、本プレイブックでは、そのテンプレートを各組織の状況に応じてカスタマイズするための実践用ガイドも掲載しています(テンプレートのカスタマイズ)。
本プレイブックの業務標準ガイドラインでは、以下の内容を取り扱っています。
文書関係・照会関係業務
文書の照会・回答を行う際の約束事を示しています。たとえば、文書の送り手側には「受け手目線で回答事務が円滑に行えるよう配慮すること」を、受け手側には「課内であらかじめ共通ルールを決めておき、回答の分担や進捗管理を円滑に行えるようにしておく」ことを基本的な考え方として提示し、具体的なルールや照会文のフォーマットを掲載しています。
研修・セミナー等関係業務
庁内で研修やセミナーを開催する際の約束事を示しています。不要なセミナーを開催しないこと、安易に動員したりしないこと、また、対象者や内容に応じてオンラインセミナーや録画配信等を活用すること等の考え方を提示しています。
庁内会議関係業務
庁内の会議を行う場合の約束事を示しています。たとえば、文書開催やオンライン開催なども含めた最適な開催手法の選択肢、事前の資料配布やアジェンダの準備など 、会議を効率化するうえでの重要な事項等を示しています。
会議アジェンダのフォーマットや、オンラインツールを活用した意見交換・情報共有の方法についても記載しています。
■活用シーン
1)テンプレートの直接活用(全職員)
本ツールは、「文書関係・照会関係業務」「研修・セミナー等関係業務」「庁内会議関係業務」を担当するすべての職員の業務改善に役立つハウツーを提供するものです。
2)テンプレートのカスタマイズ(業務標準ガイドラインを策定する事務局職員)
業務改善を担当する部署が全庁的な業務標準ガイドラインを策定する際に役立ちます。テンプレートに含まれる業務改善のノウハウを活用しつつ、各機関の業務特性や組織文化に合わせたカスタマイズを行うことができます。
■前提・留意事項
1)テンプレートの直接活用
本ツールをそのまま使用する場合には、特段の予備知識は不要です。
「まずは実践してみる」ことが何よりも重要です。その上で、より良い方法を自ら見出していくことが望ましいでしょう。
2)テンプレートのカスタマイズ
業務標準ガイドラインのテンプレートをカスタマイズする場合も、特段の予備知識は不要ですが、「SECIモデル」や「経験学習モデル」など、暗黙知化されている考え方や方法を言語化・形式知化するプロセスへの理解があると、ガイドラインを策定しやすくなるでしょう。
■使い方
本ツールの利用方法には、テンプレートを直接活用する方法と、テンプレートをカスタマイズする方法の2つがあります。
1)テンプレートの直接活用
業務標準ガイドラインは、郡山市の事例をそのままテンプレート化したものですが、既に有用なノウハウが豊富に詰まっており、そのまま業務改善の手引きとして利用するだけでも様々な気づきが得られます。他方で、最終的に全庁的に活用していくことが望ましいものの、テンプレートの内容の中には、そのまま各機関に適用するのがふさわしいか判断が必要になる場合もあります。したがって、いきなり全庁展開は行わず、いくつかの部署や業務でトライアル・検証を行うことが望ましいです。その上で、見直しが必要な場合には、(2)の手順でカスタマイズしていきます。
2)テンプレートのカスタマイズ
テンプレートをカスタマイズする場合は、以下の流れを参考に見直しを進めることになります。
① テンプレートを試行的に実施する
一部の部署や関係者の間で試行的に実施する(いきなり全庁的な適用は推奨しない)
試行実施を省略し、次のステップから始めてもよい
② カスタマイズ箇所を明確にする
テンプレートの内容について関係者で議論し、カスタマイズが必要な部分を明確にする。
(検討の観点例)
(試行した場合)実施してみてどうだったか?
テンプレートの中でそのまま活用したい部分はどこか?
カスタマイズが必要な部分はどこか?
③ カスタマイズ箇所の業務プロセスやフォーマットを検討する
関係者が集まり、「この業務はこう進めたい」「フォーマットはこうしたい」といった、あるべき姿を議論する
④ テンプレートの記載内容を修正する
上記3の議論内容を踏まえて、テンプレートの記載内容を修正する
修正した内容で、一部の部署や関係者を対象に試行的に実施して、検証する
必要に応じて、カスタマイズ内容を再修正する必要がある場合には、記載内容を修正する
以上のプロセスを繰り返しながら、組織に適した形に最適化していく
(ダウンロード資料)
ワークシート: 業務標準ガイドライン:活用テンプレート(PowerPointファイル)
ユーザー向けガイド: 業務標準ガイドライン:カスタマイズのための実践用ガイド(PowerPointファイル)
■実績・有用性
本テンプレートは、福島県郡山市が2017年に初版を策定して依頼、何度も改定を重ねながら改良してきたものです。2023年4月に公開したVer.4.0はシンプルなスライド形式に刷新され、公的機関毎の実情に応じてカスタマイズやアップデートがしやすくなっています。
■次のステップ
本ツールをより深く学びたい方は、「ファシリテーションスキル」を学ぶと良いでしょう。ファシリテーションスキルは、会議の進行だけでなく、文書の照会や、セミナー・研修の企画・開催など、様々な場 面で有効です。
(参考書籍)
ファシリテーション入門〈第2版〉(堀公俊、日本経済新聞出版、2018年)
ファシリテーションとは何か―コミュニケーション幻想を超えて(井上義和ら、ナカニシヤ出版、2021年)
また、業務改善の方法を言語化するという点では、下記のSECIモデルや経験学習モデルが参考になります。
図表1 SECIモデル

(出典:野中郁次郎『ワイズカンパニー』、東洋経済新報社、2020年)
共同化:暗黙知(経験や勘など、言葉にできない知識)を共有する段階
例:対象業務を一緒に実施する
表出化:暗黙知を形式知(言葉や図表で表現できる知識)にする段階
例:対象業務を実施する際のやり方や実施する際に意識していることを言葉にする
連結化:形式知を組み合わせて、新しい知識を生み出す段階
例:様々な職員の経験を集めて、やり方として言語化する
内面化:新しい知識を個人の知識として吸収する段階
表出化や連結化で言語化したものを実践する
図表2 経験学習モデル

具体的経験:実際に体験をする段階
例:対象業務を一緒に実施する
内省的観察:体験を振り返り、考察する段階
例:体験を通して学んだこと・気づいたことを書き出したり、なぜうまくいったのか、うまくいかなかったのかを分析する
抽象的概念化:体験から得られた教訓を言語化する段階
例:対象業務をうまく進めるやり方や考え方を言語化する
能動的実験:言語化したものを実際の行動に適用し、実験する段階
例:上記で言語化したものを、一部の部署から試行する
【関連情報】
■関連ケーススタディ
■関連フレームワーク
ECRS(改善の4原則)
ナレッジマネジメント
■関連スキル
ファシリテーション
■著作者・連絡先
作成:米山知宏(株式会社コパイロツト)
協力:福島県郡山市 総務部 行政マネジメント課
■掲載年月日
2025年3月31日
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