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行政機関向けジャーニーマップ体験版

立命館アジア太平洋大学 狩野英司

編著者:

行政機関向けジャーニーマップ体験版

ジャーニーマップは、ユーザーが行政サービスを利用する過程で体験する感情に基づいて、各場面での課題を可視化していくフレームワークです。このツールは、行政職員がジャーニーマップを理解し、自分でも活用できそうだという実感を持ってもらうためのものです。

■ツールレベル ※フレームワーク自体のレベルではありません

初級

■どんなツールなのか


デザイン思考を理解するためには、実際に手を動かして実践してみる必要があります。しかし、本格的なワークショップをアレンジすることは容易ではありません。また、行政実務に照らしたテーマでなければ、そもそも参加者の関心を引くことができません。

 こうした課題に対し、このツールは、

  • 約1時間という短い時間で効率的に、ジャーニーマップ作成の意義、さらにはデザイン思考とは何かを実感いただけるように設計しています。

  • また、自治体のほぼすべての部門で関わりがあるオンライン申請をテーマとして取り上げ、どの手続きでも必ず発生し、しかも自治体職員にとっては盲点となりがちな、利用者にとっての「認知」と「理解」の場面にフォーカスして、実際にジャーニーを作成していきます。


このツールを利用することで、次の効果が期待できます。

  • 実際に作成を体験することで、ジャーニーマップを自らの職場でも実践できそうだという確信を持つことができる

  • 実際に手を動かすことを通じて、デザイン思考の要点であるユーザー中心への「視点の転換」を実感することができる



■誰の役に立つのか


次のような問題意識を抱えている行政職員の方に役立ちます。

  1. サービスの利用率が低迷している状況を打開したい

  2. 新しいサービスを多くのユーザーに活用してもらいたい


どの部門の業務にも役立ちますが、特に次のような業務に向いています。

  • オンライン化、窓口改善、広報・PR、手続き見直し(含:ワンストップ化)



■前提や予備知識は必要か


デザイン思考及びジャーニーマップという用語についての基礎知識を持っていることが望ましいです。

デザイン思考自体になじみがない方は、下記の動画を視聴してから利用ください。

行政にとってのデザイン思考 入門編 <https://www.youtube.com/watch?v=rq1JNB_4J3E>



■どのように利用するのか


研修会や勉強会の教材として利用することを想定しています。一人で行うことも可能ですが、職員同士2~3人で集まって行った方が大きな気づきが得られます。スクール形式やオンライン形式でも行えます。ファシリテーターを置いた方がよいですが、特段のスキルは必要ありません。


具体的な利用の流れは以下の通りです。


(ワークの流れ)


  1. まず、会の目的を共有し、必要に応じ、参加者間でアイスブレークを行います。住民として行政サービスに触れたときの不愉快な体験を共有してもよいかもしれません。

  2. 次に、デザイン思考の意義について解説を行います。後述の無償動画教材を視聴するだけでも大丈夫です。既にデザイン思考についての基礎知識を共有している場合は、このステップはスキップして構いません。

  3. デザイン思考の中でのジャーニーマップの意義とワークシートの作成方法について、後述の「体験版ジャーニーマップの作成方法」のガイダンスを用いて解説を行います。

  4. 参加者に、ジャーニーマップ体験版に記入してもらいます。ワークシートの空欄部分を行動→接点→感情の順で埋めていってもらいます。所要時間は10分以内で設定して終了時刻を伝え、タイムリミットが来たら手を止めてもらいます。

  5. ワークの結果について周囲の2,3名で集まり、ユーザーにとって最大のペインポイントはどこかを中心に作業結果を共有し合ってもらいます。同じテーマであっても意外に多様な視点があることに気づいていただくためのものです。

  6. 最後にワークを通じて気づいたこと、これから取り組んでみたいことについて感想を述べ合ってもらいます。自分の仕事でも試してみよう、ということを自ら言葉に出していただき、実践を動機づけることが目的です。 


(参考時間配分)


1. イントロダクション(5分)

2. デザイン思考の説明(15分) ※オプション

3. ジャーニーマップの意義と作成方法の説明(10分)

4. ジャーニーマップ体験版の作成(10分)

5. 結果の共有(10分)

6. 感想の共有(10分)


(利用教材) ※「ダウンロード」資料参照


  • ワークシート: 行政機関向けジャーニーマップ体験版_ワークシート (PowerPoint) (0.05MB)

  • ガイダンス: 体験版ジャーニーマップの作成方法 (pdf) (0.5MB)



■なぜ有用といえるのか(実績等)


行政職員向けのDX研修やデザイン思考研修において、これまで数十回の実績を経てブラッシュアップしてきた研修教材です。

 以下は、総務省自治大学校「デザイン思考とDX」研修(2024年)での評価の一部です。

  • 政策立案の手法について、新たな学びとなった。ぜひ取り入れたい。

  • 演習によりユーザー目線で業務を考えることを体感できてよかった。

  • ジャーニーマップ初体験でしたが、経過とともに問題や疑問が可視化されてたしかにわかりやすい!と感動しました!使わせていただきます。ありがとうございました。

  • 演習によりユーザー目線で業務を考えることを体感できてよかった。

  • 実際のワークを通して、市民が知りたいことをどのような手順で伝えていくか、とても参考になりました。

  • ジャーニーマップの作成方法を学び、今後の業務に役立つと思いました。

  • ユーザー目線で考えること、ユーザーの痛みに注目して解決策を導き出していく考え方が新鮮であった。ジャーニーマップは日々の業務において活用できるものであり、新たな施策などを考える際などに使っていきたい。

  • デザイン思考というものに初めて触れたが、実際にジャーニーマップを作成してみると、行政視点とユーザー視点の違いがよく分かり、今後の仕事の進め方に取り入れていきたいと思います。



■もっと学びたい方は


(アドバンス研修・実習)


この後のステップとして、例えば、筆者が関わる研修では、以下のようなコースが設けられています。

  1. ジャーニーマップ全体を作成する研修(所要約2時間)

  2. ジャーニーマップも使いながら、一連の課題解決プロセスを習得する研修(所要約1日)

  3. 実際の課題解決の中でジャーニーマップを利用する伴走型の支援


総務省自治大学校、J-LISその他、広域自治体職員研修団体等が主催するDXやデザイン思考関連の研修会で行われているものです。


(参考文献とその概要)


  • 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(国税庁長官官房デジタル化・業務改革室 DX戦略係 係長 三輪 和平,2024)<https://www.iais.or.jp/ais_online/online-articles/20240201/202402_01/>

    • 国税庁において、実際にジャーニーマップを使いながら行政のデジタル化を行った事例が紹介されています。

  • デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン 実践ガイドブック🔗(デジタル庁)

    • 国のシステム開発プロセスを詳しく解説されています。第3編第4章サービス・業務企画p.14に「参考:ジャーニーマップ」の解説があります。

  • 行政機関におけるサービスデザインの利活用と優良事例🔗(政府 CIO 補佐官等ディスカッションペーパー,2021)

    • サービスデザイン(デザイン思考を用いたサービス開発)の基礎知識と行政での事例が紹介されています。具体的には、e-Govシステムの刷新やワンストップサービスの企画、法務省ウェブサイト更改について詳しい解説があるほか、自治体や海外での取組事例もいくつか紹介されています。

  • サービスデザインに基づくe-Govリニューアル(総務省行政管理局 行政情報システム企画課情報システム管理室 総合窓口申請係長 遠藤 琢,2021)

  • 行政における利用者中心のサービス改革の実践-サービスデザインによるe-Govの刷新-(総務省行政管理局 行政情報システム企画課 榊原 美月,2019)

    • 上記2事例いずれもe-Govシステム刷新の取組みで行われたサービスデザインの手法の一つとしてジャーニーマップを紹介しています。

  • 行政におけるデザイン思考の推進に向けた人材育成に関する調査研究(行政情報システム研究所,2019)<https://www.iais.or.jp/reports/labreport/20190331/designthinking2018/>

    • デザイン思考に関する海外事例について、ジャーニーマップが研修の中でどのように実践されているかが詳しく解説されています。

  • サービスデザイン実践ガイドブック(内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室,2018)

    • サービスデザインの理論と主な手法(KA法、ペルソナ分析、ジャーニーマップ、ストーリーボード)、ワークショップによる実践方法が詳しく解説されています。


(関連フレームワーク等)


  • ペルソナ:ジャーニーマップにおける「ジャーニー」の主人公となる架空の人物像を明確化することで、課題の深堀りや関係者とのコミュニケーションの円滑化を図るツールです。単独で研修が行われることはあまりなく、ジャーニーマップなど他のフレームワークとセットで利用されます。

  • ユーザー調査:ジャーニーマップ作成のインプットとなるユーザーの行動や感情を明らかにするプロセスです。ユーザーが行政サービス利用のどのような場面で躓くのかを発見する「行動観察」、実際に行政手続きなどを行ってみて疑似体験する「参与観察」などのほか、アンケート調査やフォーカスグループインタビューなども含まれます。


​【関連情報】

■関連ケーススタディ

■関連フレームワーク

◆ジャーニーマップ


ジャーニーマップとは、ユーザーによる一連のサービス体験を「旅(ジャーニー)」になぞらえ、各場面でユーザーが体験する感情に基づいて、それぞれの課題を可視化していく手法です。デザイン思考の手法の中でも最も広く用いられるフレームワークの一つであり、行政でも利用されることの多い手法です。

■関連スキル

デザイン思考, サービス改革

■関連研究・事業

  • APU調査研究

■ダウンロード資料

ワークシート

ユーザー向けガイド

■著作者・連絡先

  • 狩野英司(行政情報システム研究所 主席研究員、立命館アジア太平洋大学 准教授、有限会社ディーズリンク 取締役CEO)

■掲載年月日

2024年8月

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