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公的機関の課題解決方法 プレイブック

課題管理プロセス
-チームの課題を解決する仕組み-

業務量が増えてくると、組織や部署内での情報共有が疎かになりやすく、職員が仕事を抱え込んでいっぱいいっぱいになってしまうことがあります。
 課題管理は、組織や部署の課題を可視化し、情報の透明性を高め、誰かが困っているときに助け合うことができるようにしていくための取組みです。本稿では、公的機関で一般的に見られる、少人数のチームでの定常業務における課題管理の方法を、実際に使用しているツールの利用方法も含めてご紹介します。

課題管理プロセス
-チームの課題を解決する仕組み-

■関連フレームワーク

◆スプリント[1]プランニング


 「スクラム[2]」のフレームワークでは、スプリントで実行する作業の計画を作成するためのミーティングを「スプリントプランニング」といいます。

 課題管理シートの運用において想定しているミーティングは「スプリントプランニング」ではありませんが、情報の透明性の向上や複雑さを低減するために同じ時間・同じ場所で開催することを念頭に置いている点で「スクラム」の考え方を参考にしています。


[1] 一月以内の一定の決まった期間のことを「スプリント」といいます。

[2] スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、⼈々、チーム、組織が価値を⽣み出すための軽量級フレームワークのことです。

■関連スキル

業務改革

■本ツールのレベル ※フレームワーク自体のレベルではありません

初級

■どんなツールなのか


課題管理シートは非常にシンプルで、予備知識がなくても直感的に取り組みやすいツールです。このツールを利用することで、次の効果が期待できます。


① 仕事のやることや分担が明確になり、進捗が良くなる可能性が高まる

週に一度、チーム全員で打ち合わせを行い、課題ごとに「やること」、「期限」、「担当者」、「ステータス[3]」、「進捗状況」、「課題・懸念・お困りごと」、「宿題」等を明確にします。

 このツールにより、以下のような事態を回避することができます。

1.       何のために仕事をするのかわからない

2.       いつまでに誰が何をするのかわからない

3.       何をどこまでやれば仕事が完了したといえるのかわからない

4.       どの仕事から着手すれば良いのかわからない

5.       誰がどのくらいの量の仕事を持っているのかわからない

6.       それぞれの課題がどのような状況なのかわからない

 経験上、上記のような事態が生じると課題の進捗が著しく悪くなります。なぜなら、「本当に進めて良いのか?」、「この方法で本当に合っているのか?」などの疑問を持ちながら、自信がない状態で仕事を進めることになるからです。


② メンバー同士で助け合うことができるようになる

チーム全体で「課題・懸念・お困りごと」を共有することにより、誰が困っているのかをすぐ把握できるようになり、助け合うことができるようになります。


③ チームの活動を分析することにより、チームの状態を把握することが可能になる

可視化した課題の件数や推移を分析ツールにより分析することが可能になります。

例えば、図表1・2は、筆者が所属する班(チーム)の課題の件数の推移を、グラフを使って可視化したものです。


図表1 「やること」の件数の推移(単位:件)


図表2 「課題・懸念・お困りごと」の件数の推移(単位:件)

令和5年10月から6年1月までの約4か月間の件数の推移を見ると、「やること」の件数が35件前後で一定している一方、「課題・懸念・お困りごと」の件数は減少傾向にあり、課題の対処が進んでいることがわかります。

 このように、チームの活動を分析することにより、チームの状態を把握することが可能になり、様々な指標を組み合わせることで、例えば、チームパフォーマンスが最大化する業務量やチームの限界をある程度予測することも可能になります。

 ツールとして、課題管理のテンプレート(課題管理シート)を用意しておりますので、気になった方は「ダウンロード資料」からダウンロードして使ってみてください。


[3] 例えば、次のような区分でステータスを管理します。

「未着手」:対応開始していない、「OK」:問題なし、「Warning」:問題はあるがリカバリ可能、「Critical」:解決困難な問題がある、「完了」:完了した、「対応しない」:やらないことにした


■誰の役に立つのか


次のような問題を抱えている組織や部署に役立ちます。

① チームで仕事を進める上で以下の問題を抱えている

1.       何のために仕事をするのかわからない

2.       いつまでに誰が何をするのかわからない

3.       何をどこまでやれば仕事が完了したといえるのかわからない

4.       どの仕事から着手すれば良いのかわからない

5.       誰がどのくらいの量の仕事を持っているのかわからない

6.       それぞれの課題がどのような状況なのかわからない

② 業務量が特定の職員に偏っていたり、職員が仕事を抱え込んでいっぱいいっぱいになっていたりしている

③ チームにとってどれくらいの業務量が適切なのかわからない


■前提や予備知識は必要か


  特に必要ありません。


■どのように利用するのか


① 週次ミーティングとセットで運用する

 課題管理シートは、組織や部署内における週次のミーティング開催とセットで運用することを想定しています。

 ミーティングを開催しないまま課題管理シートだけで運用しようとすると、情報の更新が適時に行われなかったり、メンバー同士の会話の機会が失われたりして、情報共有や合意形成に問題が生じることがあります。


② 週次ミーティングでリズムを作る

 週次ミーティングの議題は決まっており、同じ曜日・同じ時間帯に会議を設定します。会議の議題や時間を「固定」することにより、会議の議題設定や日程調整をその都度行う煩雑さを回避することができるため、日々の業務における複雑で様々な問題への対処に集中することができます。


③ 週次ミーティングはチーム全員参加

 組織や部署内の課題管理の対象となるチームのメンバー全員が参加するようにします。メンバーが欠席すると情報共有や合意形成に問題が生じる場合があります。メンバーの欠席が常態化している場合は、週次ミーティングの時間を変更したり、メンバーを変更したりすることを検討します。


(ワークの流れ)


  1. 司会進行役の方は、ミーティングの前までに課題の記入依頼をリマインドします。

  2. メンバーは、ミーティングの前までに、自分が主担当となっている課題の「ステータス」「期限」「進捗状況」「課題・懸念・お困りごと」欄を記入します。

  3. 司会進行役の方は、ミーティングの開始とともに課題を上から確認していきます。

  4. メンバーは、自分が主担当となっている課題の進捗状況等について報告します。宿題が発生した場合は、各課題の「宿題」欄にその内容と対応者を記入します。

  5. ミーティングが終わったら、宿題の対応者は宿題に取りかかり始めます。

  6. 司会進行役の方は、終了したミーティングのシートを保護し、翌週のシートを作成します。


(参考時間配分)


  1. イントロダクション(5分)※初回のみ

  2. アイスブレイク(5分)

  3. 進捗状況の報告・宿題の記入(50分~80分)


※ミーティング時間が90分を超えると集中力が低下するとともにメンバーの負担感が高まり、毎週継続して実施することが困難になる場合があります。大きな問題が生じていない課題については簡単な共有に留めるなど、可能な限り90分以内(どんなに延長しても120分以内)に終わらせることを推奨します。


(利用教材) ※「ダウンロード」資料参照


  • 課題管理シート:【週次】課題管理シート.xlsx

  • クイックガイド(課題管理シート).pptx


■なぜ有用といえるのか(実績等)


会計検査院上席情報システム調査官付の情報C班(筆者在籍)で課題管理シートの運用を開始したところ、令和5年10月10日時点で12件あった「課題・懸念・お困りごと」を、令和6年1月30日時点で3件まで減らすことができました(75%の削減)。その後は7件前後で推移しています。

 このことから、課題管理シートを使用することで情報共有を促進し、「課題・懸念・お困りごと」の早期発見・対処に資するものであると考えられます。


■もっと学びたい方は


(アドバンス研修・実習)


課題管理シートは“慣れ”と“実践”が何より重要です。汎用的なツールですので、様々な場面やチームに適用いただき、個々のチームの状況に応じてカスタマイズや改善を行っていただくことをおすすめします。

 また、今回紹介した課題管理シートのほか、課題をカード(チケット)として視覚的に表し、課題が進捗するにつれて列やレーンを移動させて作業の進捗状況を示す「カンバンボード」の方法もありますので、いろいろな方法を調べて、チームに合うものを見つけてみてください。


より上級レベルを目指す場合は、プロジェクト管理ツール[4]などを利用し、チームの状態を測定する指標の種類や数を増やすなどして、チームの活動が改善するための目標・指標を探求することをおすすめします。


[4] プロジェクト管理ツールの主な例としては、JIRA(アトラシアン(株))、Backlog((株)ヌーラボ)、Asana(アサナ(株))、Planner(日本マイクロソフト(株))等があります。


(参考文献)


「スクラム」

    『スクラムガイド』Ken Schwaber & Jeff Sutherland 2020年11月


(関連ケーススタディ)



■著作者・連絡先

 

   三瓶健明(会計検査院事務総長官房上席情報システム調査官付情報システム調査官)

■関連研究・事業

公共アジャイル推進研究会

■掲載年月

2024年12月

■ダウンロード資料

ワークシート

ガイダンス

■ご連絡・お問い合わせ

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