公的課題の解決実践事例 ケーススタディ
東海村におけるBPR実行サイクルの確立
東海村では,将来にわたり,自治体運営を継続していくため,4プロセス(目標設定,業務可視化,業務改善実行,効果測定)からなるBPR(業務改革)マネジメント手法を確立し,業務の棚卸を体系的に実施しています。
BPRを組織的 に推進・マネジメントすることによって,業務効率化による生産性向上はもとより,職員の意識改革やDX全体の推進につながっています。
その取組み経過と成功のポイントについて紹介します。

■取組者
茨城県東海村
■編著者
茨城県東海村 総合戦略部地域戦略課 佐藤 洋輔
■関連スキル
業務改革, 業務見える化
■関連フレームワーク
業務量調査票
■背景・問題
東海村では、人口減少や社会の複雑化が進む中、持続可能な自治体運営が課題となっていた。行政組織には前例踏襲の風土が根強く、社会の変化に柔軟に対応する力や職員の主体的な行動が不足していた。また、業務の属人化や非効 率な手続きが多く、生産性の向上が求められていた。限られた人員と資源の中で、行政サービスの質を維持・向上させるため、組織全体の業務運営の見直しが急務となっていた。
■どんな変革を起こしたか
①BPRマネジメント手法の開発
業務可視化や改善計画,改善実行の進捗管理・評価を可能にするシートを作成するなど、自治体におけるBPRマネジメント手法を開発した(日立システムズと共同開発)。
②組織におけるBPR実行サイクルを確立
BPRマネジメント手法に基づき,業務可視化→改善計画・実行→評価というサイクルを組織全体で確立した。
■どんな価値を生み出したか
①BPRマネジメント手法による業務の可視化
令和3年7月から令和5年2月にかけて,全庁4,339業務の業務量・内容を可視化した。
②BPR実行サイクルに基づく業務量の削減
令和5年度には99業務のBPRを実行,5330時間/年の業務量を削減した。
【東海村のこれまでのBPR実行結果】

■変革の流れ(ストーリーボード)

東海村におけるBPR実行サイクルの確立
茨城県東海村 総合戦略部地域戦略課
佐藤 洋輔
【目次】
1.BPRに取り組み始めたきっかけ
2.はじめの一歩は税務・水道業務のRPA化
3.RPA導入からBPRへの進化
【ナレッジ:ABC分析】
4.BPR推進のポイント
1.BPRに取り組み始めたきっかけ
東海村では令和2年度に策定した第6次総合計画に“新しい役場への転換”を掲げました。これは,人口減少という社会背景の中,将来にわたって東海村を発展させていくために「役場のサービス提供や経営をなんとしても刷新しなければならない」という山田村長の強い想いがあったためです。
この“新しい役場への転換”を具現化する手段として11月に策定されたのがDX推進計画である「とうかい“まるごと”デジタル化構想(通称:まるデジ構想)」で,策定当初から最重要施策として始めたのがBPR(業務改革)です。
DXの目的である「新しい役場への転換」は,提供するサービスを転換させ ることはもちろんですが,その提供者である役場(行政)組織を生まれ変わらせることだと考えていました。行政の現場には「前例踏襲」と言われるような生産性を阻害する風土があることは否定できませんし,社会ニーズの変化をキャッチし,自ら行動できる職員が多いとは言えないのが実情です。今後の人口減少や複雑化する社会の中で,しっかりと行政として役割を全うできる役場であるためには,「生産性が高く,変化に対応でき,職員が成長できる組織」に役場を変えていく必要があります。
そこで目を付けたのがBPRです。BPRはDXの取組みの中で,ジャンルを問わずなじみやすく,小さいことからでも取り組めるので,BPRによって事業や業務の棚卸しと再構築を絶えず繰り返すサイクルを生み出すことができれば業務の最適化(デジタル化)と職員の意識改革を同時に実現し,目指す組織に近づくことができると考えました。
2.はじめの一歩は税務・水道業務のRPA化
令和2年度,BPRとして東海村で最初に取り組んだ のは,業務フローにRPAを導入することでした。RPAを導入するにあたっては,RPAプログラムを開発するスキルを持つ職員がいなかったため,「RPA導入支援業務」として日立システムズに担っていただきました。RPA導入を皮切りに,今後のBPRの展開を考えていきたかったので,委託内容はRPA化する対象業務の選定やRPA導入後の効果,その後のRPAの活用策検討,としました。
当時,RPAはまだ一般的に知られているツールではなかったため,職員説明会でRPAの機能や導入スケジュールなどを説明したうえで,各課にRPA化したい業務を募集しました。その結果,21課から129業務もの応募があり,職員の業務効率化したいという意欲やデジタルツールに対する期待を感じる結果でした。応募された129業務はすべてヒアリングをして,業務効率化の効果が高いと見込まれる「税務課の扶養調査業務」と「水道課の二重納付処理業務」をRPA化することとなりました。その後,詳細ヒアリングや日立システムズのエンジニアによる開発を経て,無事に2業務にRPAを導入し,合計で439時間/年の業務時間を削減することができました。
その成果を税務課職員から発表してもらう機会も設け,BPRすることや業務にデジタルツールを活用することの有用性を理解してもらうきっかけとすることができました。
これら一連のRPA導入によるBPR実行は,委託業者である日立システムズに伴走していただきました。
3.RPA導入からBPRへの進化
(1)RPA導入による気づき
業務へのRPA導入をした過程で,東海村では2つの気づきがありました。
ひとつは,RPA導入業務選定に際し,129業務もの応募があり,それらすべてをヒアリングした中で気づいたことですが,BPRの手段は必ずしもRPAが最適解ではないということです。129業務の中でRPA化が有効であると判断した業務(業務量削減時間が50時間/年を超えるもの)は14業務でした。その他は,アナログなものも含めた別の手段によって効率化する必要があったのです。
もう一つは,RPAの開発は職員による内製では非 常に開発効率が悪いということでした。R2年度に開発したうちのひとつである水道課のロボットは当初職員による開発を目指していました。ところが,RPAによってシステム操作を自動化するためには,RPAが途中で停止しないように,動かすシステムがどのようなプログラムで動いているかを把握した上で開発する必要があるなど,広範なIT知識とプログラム開発スキルが不可欠であることがわかりました。
これらのことから,BPRを進めていくには,RPAだけでなく様々な手段を用意し最適な業務にリニューアルしていくことができる仕組み,RPAなどの開発スキルを持った人材が必要であるという結論に至りました。
(2)共同研究によるBPRサイクル確立
BPRをどのように組織に根付かせていくか検討していたところ,R3年度に,日立システムズと共同研究という形でBPRサイクルを回す仕組みを確立しようということになりました。
BPRのサイクルを以下 の4プロセス(目標設定、業務可視化、業務改善、効果測定)に分類し, 確立することができました。
① 目標設定
組織全体でBPRを実行していく際に,年間どのくらい業務量を削減する必要があるのかという目標を数値化する必要があります。東海村は2040年には人口が5.8%減少する見込みとなっているため,2021年度のBPR対象課の総労働時間を基準として,2040年までに5.8%削減することをゴールと設定し,各年度の目標労働時間を設定しています。毎年度当初には,前年度の総労働時間の実績と目標の労働時間の差分をBPRで削減する業務量の目標として設定します。
■R5年度の目標値設定

② 業務可視化
東海村では,BPRを実行・マネジメントするために,全業務の可視化を行っています。業務を削減すると一口に言っても、 削減対象の業務がどの程度あるのかを把握しなければなりませんし,業務の手順などは紙、場合によっては経験で管理していることも多いことから、1つ1つの業務の手順について可視化しました。
可視化の方法は,各課のすべての業務について、作業手順、所要時間、実施サイクルなどを業務把握アンケートに入力します。作業手順の類型をリスト化するなど,できるだけ記述を少なくする工夫を重ね,R3年度は3課568業務,R4年度には全課4,339業務分を可視化しました。
その後も,繁忙期の有無や使用するネットワークの項目を追加するなど,BPRサイクルを回すための情報をどのくらいの深さで可視化するかという狙いを明確にしながら,徐々に可視化する業務把握アンケートの様式も改良を重ね,今の形となっています。
■業務把握アンケート

③ 改善案計画作成と実行
確立したBPRサイクルでは,業務量を含めて全体を可視化しているので,ABC分析(Knowledge①参照)によって負荷がかかってい る部分は何かという視点で進めることができます。負荷がかかっている業務をターゲットにして改善案を考えることができます。
ターゲットとなった業務は,「改善検討会」を開いて,各課と我々DX所管課,日立システムズで対話しながら改善案を検討していきます。具体的には,業務に係るすべての作業を明らかにし,業務量の大きな作業から改善を検討していくという進め方をとっています。改善案は,「そもそもその作業は何のため?必要か?」などの切り口や適用できるツールがないかなどの視点で考え,作成していきます。作成後は,実行時期を決め,実行の役割分担を決めます。RPA開発などIT専門スキルが必要な部分についてはDX所管課で担うこととしていますが,それ以外は担当課の職員が実行します。
この業務改善の検討は、R3年度に62業務、R4年度は112業務と、合計174業務について行いました。R5年度以降は,基本的には,各課が主体的に検討し,改善計画を立てるという形に移行しています。ただし,各課が年間の改善計画を立案する6月と異動した職員も業務に慣れてきた10月の年2回は,改善検討会を開き,各課で結論が出ないものやITスキルが必要なものをDX所管課と一緒に検討しています。

④ 効果測定
実行した結果は,各課の業務担当者がその結果を入力していきます。この入力結果をDX所管課は月次でチェックし,進捗を把握しています。年度末には,すべての結果を集計し,組織内で共有します。


(3)BPRを実行するために必要なこと
BPRを進めていくためには,日立システムズとの共同研究により確立した仕組みに加え,生み出した改善案を実行し,業務量削減効果を出すことが重要です。改善案の中で効果が高いのは「RPA」や「Excelマクロ」を活用したものが多いので,それらを開発できるITスキルを持つ人材が確保できれば,実行効果は大きくなります。そこで,各課の改善案をツール開発によって支援していく外部人材を確保することとしました。
東海村では,R3年度に民間企業と派遣契約を結び,エンジニアをDX専門人材としてフルタイムで常駐させています。現在は2名体制で,BPRに係る各種開発・保守,DX施策に係るツール導入・運用・保守,職員へのIT教育などに従事しています。こういった専門人材を確保し,BPRで活用するツールを内製できる体制にできたことが,各課のBPR推進につながり,組織全体のBPRの浸透につながったと感じています。

一方で,RPAを含めた,以下のデジタルツールを実装し ,BPRに活用できる武器として用意しています。これらは,職員が使えるように体験会や研修会を開き,わからないことは適時DX専門員が相談・支援をするという仕組みで浸透させています。
ITツール名 | 有効に活用できる作業プロセス |
RPA | 同じ操作を何度も繰り返し行っている(ライセンス:開発3,実行4) |
Excelマクロ | 大量のデータをチェック(処理)している |
kintone | ナレッジ情報を管理し,複数人で共有している(ライセンス:90) 同じデータを複数管理している。 |
AI-OCR | 定型用紙からデータをシステムまたは,Excel等へ手入力している |
AI議事録 | 音声を文字起こししている |
AIチャットボット | マニュアルを繰り返し複数人が参照している |
【ナレッジ①ABC分析】 ABC分析とは,「物事を構成する要素は,全体に占める割合に偏りがあり,一部の要素が全体の大部分を占める」という考え方を基にした分析手法です。例えば,「2割のヒット商品 (Aランク)が,全体売上の8割を生む」「2割の社員(Aランク)が,全売上の8割を生む」等です。 BPRにおける活用については,このABC分析の考え方に基づき,「Aランクを全体 (構成比率累計)の80%の業務時間を占める業務群」と定義し,「業務時間」全体の大部分(8割)を占める「業務」は何か?という観点で分析を行っています。Aランクの業務にターゲットを絞り,改善案を検討することでBPRの効果が高い業務から改善していくことができます。
■住民課のABC分析結果(R3) ![]()
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例えば,住民課(R3年度)の例でいうと全体では145業務で年間24,312時間の業務量がありますが,そのうち27業務で約80%である19,503時間の業務量を占めています。この場合,BPRをするターゲットは,この27業務を優先して改善案を検討することで,より効果の高い業務を選定できます。実際,この中に年間2,057時間/年の業務量である「マイナンバーカードの交付に関する業務」があり,その作業の一部の“マイナンバーカードを交付した時の説明”を“動画での説明”にしただけで,363時間/年の業務量削減に繋がりました。負担が大きいところから手を入れるため,ABC分析が有効です。
4.BPR推進のポイント
(1)BPRをどのように捉えるか
BPRとは,Business Process Re-engineeringの頭文字を取った略語で,日本語に訳すると「業務改革」という意味になります。業務の部分的なプロセスの見直しではなく,業務内容や業務フロー・組織の構造など業務の全プロセスを根本的(抜本的)に再構築(全体をゼロベースで見直し)し,業務効率化およびコスト削減等につなげることをいいます。一方,「業務改善」は,現状の業務プロセスを肯定し,部分的なプロセスに対して改善を講じることとされています。つまり,厳密にいうと手を入れるレベルによって「BPR」なのか「業務改善」なのかは違うということになります。
例えば,窓口で紙の申請を受領し,その内容をシステムに入力・登録,その後決定の連絡をするという業務があったとします。業務改善の場合,受領した紙を「AI-OCR」でデータ化し,そのデータをRPAで自動入力し,連絡文書を印刷する,といった改善方法があります。BPRの場合は,住民がオンラインで申請し,申請データがシステムに自 動入力され,職員が審査後は,システムからオンラインで住民に決定の連絡が行く,といったフローになります。BPRは業務の目的はそのままに,根本から業務フローを変えます。この「BPR」と「業務改善」は,混同しやすいため,東海村では「業務改善」も「BPR」の一部であるという解釈で,一律に業務に手を入れ効率化することを「BPR」と称しています。現在,組織全体で推進するようになって2年が経過しようとしていますが,ほとんどが「業務改善」と言えるものの積み上げとなっています。
これには理由が2つあります。1つは,現状のプロセスを基本にしつつ一部のプロセスの効率化を図る方が,即時性があり実務担当者の成功体験につながりやすいことです。2つ目は,業務改善を実行していく中で,庁内全体の共通プロセスの改善につながる場合があることや根本的な課題の発見(解決すればBPRとなる)につながる場合があることです。
これらの理由から,即時性を重視して,改善レベルの「BPR」をどんどん積み上げ,職員の意識改革と業務効率化を進めています。そして,進捗に合わせて,共通業務や組織の構造的な課題解決,根本的な「BPR」の割合を徐々に増やしていっている,という状況です。

(2)導入・定着期の推進ポイント~組織への浸透~
BPRは業務量削減や職員の意識改革につながる取組みですが,現在の業務にプラスして改善を行う負荷がかかりますので,一時的に業務量が増えてしまいます。加えて,これまでのやり方を変えることについて抵抗を覚えることも珍しくありません。そのため,BPRを組織に浸透させていくためには,押さえておくべきポイントがあります。
1つ目に,改善効果を早期に出すことです。BPRを実行することは一時的に負荷がかかりますので,効果が組織内に認知されなければ機運が醸成されません。できるだけ手間がかからず改善効果の大きい業務で結果を出し,それを大々的に組織内周知することで,自分たちも取り組みたい・やらなければという当事者意識を職員に持ってもらうことが重要です。東海村でも,最初に取り組んだBPRは2業務のみですが,439時間/年分の業務量を削減でき,担当職員の喜びようといったらありませんでした。BPRによって業務がラクになったことを,かかわった職員にも協力してもらいながら発信することで,次なるBPRにつながっていきます。
次に,小さくスタートすることです。いきなり全業務を可視化し,組織全体でBPRを回そうとするのは危険です。なぜならば,BPRをするための業務可視化や改善案検討などの一時的負荷が莫大で, 効果が見えない中で取り組んでしまうと,職員の「やらされ感」がまん延してしまうからです。まずは,定型業務が多い特定の課から始める,あるいは各課が課題を持っている業務だけ可視化するなど一部からスタートすることが重要です。東海村でも,前述したとおり3課から全業務可視化をし,可視化して改善案を検討すると非常に効果的だという結果がでてから全課展開しています。まずは小さくスタートして,そこで結果を出してから組織全体に展開していくほうが浸透しやすいと言えるでしょう。
最後に,行政経営サイクルと経営層の発信力を活用することです。どんなに庁内広報しても全員にBPRの必要性を理解してもらうことはほぼ不可能です。そんな中で組織的にBPRを展開していくために有効なのは,組織全体の事業計画や組織目標,人事評価などの行政経営サイクルの中にBPRを位置づけてしまうことです。例えば東海村では,実施計画の重点施策にBPRによる業務効率化が設定されていますし,課長補佐以上は必ずBPRに関連する人事評価上の目標を立てることになっています。ただし,そのためには,BPRが組織に不可欠であるという認識を経営層に理解してもらう必要があります。あらゆる機会を活用して「職員がBPRに取り組むことで意識が変わり、職員の育成につながり、常に変化を続ける組織に変わる」ということを経営層に示し続け,行政経営サイクルの中に位置づけることが適当だという判断を勝ち取らなければいけません。ここはDX所管課職員の腕の見せ所です。 併せて,首長にBPRの必要性を庁内に発信してもらい,職員の士気も高めてもらいます。やはり,経営層の発信力は,何かを進めていくために非常に効果的です。そういう意味でも,経営層への説明・報告とそれによる経営層のコミットは重要なポイントのひとつです。
(3)発展期~共通業務BPR実行~
東海村では,R2~R5年度の4年間で138業務のBPRを実行しました。R6年度についても昨年度と同程度の100業務程度を予定しています。課毎に多くのBPRの成果が積みあがっており,業務削減に貢献しています。組織にBPRが浸透し,各課主体的なBPRが実行され,現場で常に業務最適化がされていくことは,DXで目指す組織変革のゴールともいえるものです。
しかし,一方で,課の固有業務だけのBPRにとどまってしまうと,どうしても「部分最適なBPR」になってしまい,業務削減効果がいまひとつというものもありますし,類似業務でも課によってやり方が違うということにもなりかねません。例えば,同様の行政手続きについて,2つの課で以下のように異なる処理方法で行われてい たとします。
・A課では紙の申請書を受領し,AI-OCRでデータ化した後RPAで処理を自動化する。
・B課ではオンライン申請利用率を高めるとともに,来庁した場合でも窓口でオンライン申請システムを利用し申請する方式に変え,その後はA課同様にRPAで処理する。
この場合,B課の方が効率的であり,書かない・行かない窓口が実現するのでサービス水準も高くなります。二つの課で異なる業務フローをしていることは,全体最適な視点としては望ましくありません。オンライン化であれば,全課で原則オンライン申請システムを活用した行政手続きフローにBPRすることが効果的で,DX所管課が旗振りをし,全体最適なBPRを実行していく必要があります。
東海村でも,こういった共通業務について,少しづつ統一的なBPRに取り組み始めています。昨年度は,異なるネットワーク間でのメール転送作業が全課に存在していたので,自動転送する設定を共通で入れたり,毎月定額の支払伝票を起票する場合に使用できるRPAを開発しました。今後取り組んでいきたいと考えているのが,前述した,窓口においてオンライン申請シ ステムを使い,紙での申請をゼロにする取組み,会計年度職員の労務管理のデジタル化などです。全庁的に統一的なBPRとなると,組織での意思決定やガイドライン策定,例外処理への対応,職員への説明・研修などエネルギーが要りますが,大きい効果が期待されますので,今後は各課自走のBPRに加え,組織全体の構造的な部分や共通業務におけるBPRを増やしていきたいと考えています。
まとめ
a. 本ケースの特徴的な点
1. 組織的なBPR実行サイクルの 確立:単発の業務改善ではなく、継続的な改善を実現する仕組みを導入。
2. 全庁的な業務可視化の実施:4,339業務を網羅的に可視化し、データを基にした改善を推進。
3. 職員の意識改革:業務改善の成功体験を共有し、組織全体のBPRマインドを醸成。
b. 当該手法の活用に係る留意点・前提条件、再現可能性に関するコメント
外部専門家の支援:手法の確立自体は日立システムズ社の協力によるところが多かった。
初期の業務可視化の負担:全庁的な業務棚卸しには相応の労力が必要であり、段階的 導入が必要。
経営層のコミットメント:BPRを推進するためには、首長や幹部の強い意思と発信力が不可欠。
【プロフィール】
佐藤 洋輔
東海村総合戦略部地域戦略課 課長補佐。平成21年度入庁。
令和2年度に第6次総合計画に掲げる「新しい役場への転換」の具現化をミッションとして「とうかい“まるごと”デジタル化構想」を策定。以降,DXによる役場改革に取り組む。
令和5年度から総務省「地域力創造アドバイザー」「経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー」として,小規模自治体を中心にDXやBPRの支援をしている。
■掲載年月日
2025年2月
■関連研究・事業
行政情報システム研究所調査研究