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2025年3月31日

フレゼリシア市(デンマーク)

部門横断型協働のデザイン

Synean株式会社、代表取締役 グロンデル エスベン

編著者:

部門横断型協働のデザイン

多くの公的機関が、部門をまたぐ課題に直面しています。こうした課題は特定すること自体が難しく、さらに課題に対してインパクトのある変化を起こすための勢いを組織全体としてつけていくことはより困難です。デンマークのフレゼリシア市(Fredericia Municipality)の健康福祉部門では、部門間で協働するための新しい方法論である部門横断型協働のデザイン(CD2)のプロセスを開発しました。本ケーススタディでは、取り組んだ課題や解決のプロセス、その過程で創出された価値について紹介しています。

■関連フレームワーク

■背景・問題


デンマークのフレゼリシア市では、ある管理職が部門の境を越えて多部門に影響が及ぶような課題に直面しました。その課題とは、健康福祉部門における協働、調整、およびデータ共有に関するものでした。

 


■起こした変革


  • ウェルビーイングのレベルを記述するためのモデルと共通言語の策定

  • チームの編成方法をガイドする意思決定ツリーの開発

  • 標準的な行動計画のテンプレートと、進捗を追跡し、改善点がどの領域にあるかを特定するためのデータ管理の仕組みづくり

 


■生み出した価値


ケースワークを開始するまでの待機期間が数か月から2週間に短縮されました。

 


■変革のストーリー



 


 




1 導入の経緯


2021年、フレゼリシア市役所の管理職の一人が、市役所が従来行ってきたプロセスによる児童のウェルビーイング(児童福祉)への支援方法に課題があると認識しました。この管理職は、自身の所属部門の枠を超えて問題を調査する必要性を感じ、その課題が組織全体でどのように現れているのかを理解するために時間をかけて分析を行っていきました。

 

ここでの課題は、自治体が児童のウェルビーイングに関する対応の調整をどのように行っているかでした。このケースでは、どのようにシステムへ入力するかによって、いくつもの異なる担当部課で、異なる進め方で取り扱われるようになっていました。根本的な問題として、それまで部課・部門間の連携がほとんど取れておらず、それが業務の非効率とサービスの質の低下を招いていたのです。

 

この課題を適切に解決するためには部門横断的な協働が必要であると判断し、大規模な組織や公共部門に適したイノベーション・プロセスでこの課題に取り組みました。これが後に「部門横断型協働のデザインー(CD2)のためのプレイブック」としてまとめられることになりました。


1.1 子どものウェルビーイングとは


ここで取り上げるウェルビーイングが損なわれている軽度のケースとしては、例えば、両親が離婚した子供が、悲しみに暮れ、孤立し、社会参加をやめてしまうような場合が挙げられます。状態がエスカレートしてくると、食卓の下に座り込んだり、食事をとらなかったり、寝つきが悪かったり、外部の人間に対してネガティブな反応を示すようになります。もう少し年長の青少年になると、薬物やアルコール、犯罪に手を染めていくような場合があげられます。


1.2 現状


この場合、子どもが健全に成長していないことに気付いた親や教育現場のスタッフ(教師など)が、警告を発することになります。

 

フレゼリシア市では従来、健全に成長していない若者が認識された場合、担当者がまずプランAを試し、効果がなければ次にプランBを試すというアプローチを取っていました。それぞれのプランを試してその効果をみる間にも、待機期間が生じていました。個別のケースに対して標準的な対応を順番に試すという、効率の悪い「当たり外れ」のある対応がとられていたのです。

 

また、関係者間での調整が行われていなかったため、様々な人がそれぞれ別個に支援を要請し、複数の介入が同時に行われることもありました。その結果、子ども本人とその家族に、担当者への対応のための予定の調整などに負担がかかる状態となっていました。


2 プロジェクトの目的


本プロジェクトの主要な目的は、課題を正しく特定することでした。その後、プロジェクトは、組織全体をまとめ、職員に業務への取り組み方を変えてもらい、課題に対しての解決策を見出す取り組みへと発展していったのです。


<プロジェクトの目的>


(1) 組織全体に関わる課題を正しく特定すること

(2) その課題に対応するための部門横断的な解決策を策定すること

 


3 実施内容


3.1 フェーズ1:課題の兆候を察知する


フレゼリシア市の青少年サービス部門の責任者であるラスムス(Rasmus)氏と、福祉サービス部門の担当職員でプロジェクト・マネージャーであるメッテ(Mette)氏は、サービスを提供する際に業務が重複して行われているケースが多いことを元々見抜いていました。

 

こうした中、ラスムス氏が別の福祉関係部署の管理職への兼務を暫定的に任命された際に、自身の所属部署で扱われているある市民に関するケースがこの部署でも別の対応が行われていると知ったことで、様々な問題が浮き彫りになったのです。

 

特に課題として目立ったのはある少女のケースで、彼女は成長が著しく遅れており、家庭でも学校でも多くの問題を抱えていました。ラスムス氏がこのケースを調べていくうちに、自治体の9名もの職員が少女とその家族に対し別々の観点からサポート対応していたにもかかわらず、互いの業務を調整しておらず、それぞれが尽力していることさえも知らなかったことが明らかになりました。彼らが使っていたシステムはすべてデータを共有するように設定されていなかったため、こういった状況を知ることができなかったのです。

 

このケースがきっかけとなり、課題への対応はフレゼリシア市の福祉サービス全体を改革する大規模プロジェクト「Trivsel+(トリヴセルプラス)」へと発展していくことになりました。

 

ここではラスムス氏が課題の兆候を察知したことが、「部門横断型協働のデザインのためのプレイブック」におけるフェーズ1にあたります。課題を察知する人物が管理職である必要はありませんが、管理職は立場的に部門横断的な問題を察知しやすい傾向にあります。課題を察知した人物のことを「イニシエーター(先導者)」と呼んでいます。

 

課題を察知したラスムス氏は、その状況を単なるデータの異常値として扱うのではなく、それをナラティブ(物語)化していきました。

 

ここで用いられた設定、対立、解決[1]というナラティブ化の手法は、古典的な物語や小説の構成手法(物語のあらすじを時系列に並べる手法。ナラティブアークとも呼ばれる。)に由来しています。「設定」は課題の背景、「対立」は課題の本質や要素、「解決」は課題の解決策を指しています。本ケースでのナラティブの構成においては、この段階は問題の現在の「状況(現状)」を指しています。(ワークシートとしての視覚的表現については図1を参照)

 

ラスムス氏は、ナラティブというものが持つ根本的かつ普遍的な訴求力を利用し、察知した課題をナラティブ化することで、共感と関心を高めていきました。

 

図 1: ストーリー化する際の3つの要素(エレメント)



課題の兆候についてのワークシートは、イニシエーターが察知した課題を組織全体で取り組むべきこととしてナラティブ化する方法を概要として示しています。

 

このケースの場合、ラスマス氏が繰り返し語ったのは、9人の職員が1人の少女とその家族に対応したときのナラティブでした。以下は、彼のナラティブの内容を設定・対立・現状の3要素に整理したものです。

 

(1)設定


「私はこの暫定的な役職に就き、そこで、私が働いている別の部署の会議でも話題に上ったことのあるケースを耳にしました。自分の部署ではすでに対処済みのケースだと思っていたのですが、他の部署でも同じケースに取り組んでいるようです。」

 

この設定の段階で、聞き手はストーリーの設定、現状、そして関係者へと引き込まれていきます。

 

(2)対立


「私が掘り下げて聞いて回ったところ、どうやらこの件には9人の人間が係わっているのですが、連携はしていないようなのです。」

 

これが彼が察知した課題の要点であり、非常に明確な対立点です。これを聞いた人は、明らかに非効率な状況に対して、すぐにこれは問題だと感じるでしょう。

 

(3)現状


「私が監督している部署では、他のケースでもこのようなことが起きているようです。あなたはこのような状況にお気づきでしょうか?」

 

この現状の段階に踏み込んだところで、話をまとめ、好奇心をそそる質問を投げかけます。

 

フェーズ1で重要なのは、「好奇心を持った問いかけ」です。ここでの目的は解決策に対する合意を得ることではありません。また、何かに対する賛同を取り付けることでもありません。むしろ目的は、察知した課題が実際に存在すると検証することにあるのです。(データ、知識、証拠(エビデンス)といったよく言及されるトピックとの関連については、「ナレッジ・コラム1」を参照。)これが、本プレイブックがこのフェーズにおいてミーティングを双方向的に行うべきことを強調している理由です。

 


コラム: データ、知識、証拠に関する補足説明

このアプローチは、関係性に基づく定性的なデータ検証です。業務が部門をまたがると、関係者の直感や感覚は非常に強力で精緻になります。ラスムス氏は自分が見ているものをオープンにするタイプの管理職で、他の管理職と話し、暗黙の了解としている知識から学ぼうとしていきます。

 

仮にラスムス氏が自分の部署の現場の人々にこのケースについて話を聞きに行ったとしたら、自分たちの業務が管理しやすい方向へ明らかにバイアスのかかった、かなり狭い意見を聞かされることになったでしょう。彼らの立場では、不都合なことがあってもよくある問題としてまとめてしまいがちなのですが、管理職は組織にとってより広い利益につながるよう気を配っているため、そういうことをする可能性は低いのです。

 

エビデンス(証拠)、データ、知識は同じものではありません。エビデンスに基づいた仕事にこだわるとすれば、何かについて適切なエビデンスを集めるには長い時間がかかるため、常に遅れをとることになります。その代わり、プレイブック「部門横断型協働のデザイン (CD2)のプロセス」のアプローチでは、何よりもまず、各部門の管理職にとっては一般的で暗黙の了解となっている経験から、皆が知っていることを確実にしていくのです。

 

ナラティブ・アプローチ(物語に着目した問題解決に関するアプローチ)は、この目的の達成を目指す上で重要なツールとなります。

 


フェーズ1は関係の構築と探索を目的としています。双方向性のミーティングにおいて、オープンかつ好奇心を持った姿勢で臨むことで、関係者との信頼関係を築くことができます。これは、今後取り組みを先に進める上で重要な要素となります。ミーティングは誰もがずっと行ってきたものであり、ミーティングを実施すること自体が手法なのではなく、ミーティングの場におけるイニシエーターの姿勢こそが双方向性のミーティングの手法としての本質なのです。単なる意思決定のために意見を求めるのではなく、関係者の声を収集し、傾聴することが求められます。

 

Trivsel+のケースでは、児童のウェルビーイングが危機的状況にあることが明らかでした。今後、自治体が全体最適な形で機能し続けるためには、この課題に対処しなければならなかったのです。もしこの課題が放置されればいくつもの部署が同じケースにばらばらに取り組むような非効率な状態が続き、将来的に自治体の予算では現在の福祉の水準を維持できない事態に至るかもしれません。

 

このナラティブの読者は、察知した課題が部門横断的かつ根本的な問題であるという、かなり明確な印象を持ってフェーズ1を終えます。

 

このセッションを行っている間も、ラスムス氏は福祉サービス担当スタッフのメッテ氏と会って話し合いました。ラスムス氏は、部門横断的な問題が喫緊の課題であると感じたため、メッテ氏にプロジェクトとして取り組むよう任じました。


3.2 フェーズ2:組織の背景・環境(コンテクスト)


プロジェクト開始当初、彼らは解決すべき課題の洗い出しに多くの時間を費やしました。ウェルビーイング(デンマーク語で 「trivsel」)はデンマークではかなり緊迫した話題に発展しがちなワードであり、国民的な関心が高いテーマです。ウェルビーイングが欠如しているという場合、それは根本的な問題であり、これが解決されれば、社会全体にポジティブな波及効果を生み出すことができるのです。したがって、プロジェクトの核となる課題、解決すべきこと、解決すべきでないことを具体的に示す必要がありました。

 

彼らは、課題の兆候があることを確認した状態でフェーズ2に進みましたが、次なる課題は、組織全体における課題の背景・環境を明確にすることでした。

 

フェーズ2は「組織の動機付けと準備」に関するものです。Trivsel+のケースでは、正式な決裁権(意思決定権)を持つ関係者とともに、複数の利害関係者による会議を立て続けに開催することで、このプロセスが進められました。この段階で、非公式な権限を持つ関係者を含めると、プロジェクトの方向性を制御できなくなるかもしれないという懸念があったため、意図的に正式な決裁者との間で合意形成を行いました。非公式な決定権を持つ関係者は、その後の実施段階で異議を唱える可能性があるのですが、チームのこれまでの経験から、正式な決定権(すなわち「トップダウン」)に基づく問題認識の合意があれば、そうした異議には対処しやすいことが分かっています。

 

Trivsel+のケースでは、組織内の関連部門の全管理職が、自分たちの責任領域が何であれ共通の課題として認識できる6つの根本的な課題を特定し、それに関する合意を形成することができました。

 

核となる6つの課題は次のとおりです。

 

(1) 会議が、現場の実務に変化をもたらすことはほとんどない


会議がエンドユーザーの経験に貢献しないことは少なくありません。つまり、会議の数が多すぎるのです。

(2) 成功が特定の個人に依存している


職員による努力の成果は、多くの場合、特定の個人が関与しているかどうかに左右されています。つまり、協働プロセスが「個人依存型」になっているという状況です。


(3) 並行した取り組みの多発


多くの場合、職員は誰が誰と、何をいつするのかを知らないため、組織全体で多数の取り組みが重複し、並行して行われています。


(4) ガバナンスの欠如


ケースワークに関わる職員が、自分たちが何をすべきか、何ができるのか、何を許可されているのか、そして誰が自分たちを助けてくれるのかについて、疑問を抱くことがしばしばあります。ガバナンスが明確でないため、協働が妨げられているのです。


(5) 責任を持つべき者が少なすぎる


職員は責任を持ちたくないわけではありません。どういった場合に部門を超えて業務にあたるのかが不明確なため、誰が意思決定すべきなのかが曖昧になっていたのです。


(6) 市民が調整の責任を負っている


市民が直面する課題が多ければ多いほど、複数の職員と連絡を取らなければならない状況になっていました。

 

これら6つの根本的な課題が明確に定義され、公式に関係者の合意を得たことで、すべての関係者にとってこの取り組みを推進するための明確な「なぜ」という理由が共有されました。


3.3 フェーズ3:交差的マッピング


課題の定義が明確になり、部門間で合意が形成されたことで、ラスムス氏とメッテ氏は第3のフェーズである「交差的マッピング」へ進んでいくことができました。「交差(Intersection)」という用語は、「部門横断(cross-department)」よりも広範な概念として用いられています。これは、自治体の部門の枠を超えた利害関係者(例えば市民)も対象に含めるためです。

 

フェーズ3のポイントは、特定された6つの主要な課題に対して可能な限り広い視点を得ること、また、最も効果的な解決策を見出すための手がかりを得ることです。このワークは、課題によって影響を受けるすべての利害関係者(ステークホルダー)の視点を取り入れることで、部門横断的な視点を維持するのに役立っています。

 

Trivsel+ のケースでは、このプロセスの取り組みとして、組織内のあらゆる階層の関係者約350名を対象に、インタビュー、フォーカスグループ(小規模な討論会)、サーベイ調査を実施しました(図2)。組織のあらゆる階層から意見を得ようした背景には、主要な課題に対する多様な視点を得ることで、解決策の範囲をより詳細に定義できる可能性が高まるという考えがありました。

 

図 2: CD2プレイブックにおける交差マッピング用ワークシート



プレイブック「部門横断型協働のデザイン (CD2)のプロセス」では、この作業が組織内の部門と階層の関係を大まかに示すマップとしてまとめられています。

 

ワークを通じて得られたすべての情報と知見は、ラスムス氏とメッテ氏によって設置されたワーキンググループ内、さらに、より広い範囲の関係者とも共有され、一連のミーティングで議論が行われることで、利害関係者との間での情報の可視化、認識の共有が可能になりました。

 

フェーズ3は完了までに約1年を要し、その間に歯科医、ボランティア、教師、保護者、関連部署の管理職やその他多くの関係者と対話を重ねました。

 


4 成果


4.1 Trivsel+(トリヴセルプラス)の開発


この1年間にわたるプロセスから生まれた解決策が、「Trivsel+(トリヴセルプラス)」と呼ばれる取り組みです(Trivselはデンマーク語で「ウェルビーイング」を意味しています)。

Trivsel+という取り組みは、自治体内の異なる部門や専門職の協働を促進することで、0歳から25歳までの若者のウェルビーイングを向上させることを目的としています。

Trivsel+の取り組みは、部門横断的な根本的課題を解決するために以下のような複数のツールを組み合わせて構成されています。


  • ウェルビーイングのレベルを記述するためのモデルと共通言語

  • チームの編成方法をガイドしてくれる意思決定ツリー

  • 標準的な行動計画のテンプレート、また進捗を追跡し、改善点がどの領域にあるかを特定するためのデータ管理の仕組み


また、本フレームワークでは、部門横断的な会議に関する具体的な原則を強調しており、例えば、すべての参加者が行動を起こす権限を持つこと、そして管理職が従業員の行動を調整・支援することに重点を置くことなどが挙げられています。


4.2 Trivsel+の特長


従来の縦割り型のアプローチでは、若者の課題に対応する上で限界がありました。この状況を認識したうえで、Trivsel+は、若者が困難に直面した際に、迅速かつ効果的に介入できる協働の仕組みを構築することに重点を置いています。

 特定された根本的な課題を克服するために、Trivsel+では情報共有のための共通プラットフォームを導入し、協働のためのプロセスの重要性を強調しました。

 その中心的な要素の一つが「迅速対応型協働プロセス」です。これは、懸念点が挙げられてから14日以内で迅速に部門横断的なチームを編成できる仕組みを確立するものです。このチームは、教育、ソーシャルワーク、医療などの分野の専門職から構成されており、若者の個別のニーズに対応するために協力して支援を提供します。このプロセスの具体的な内容として、すべての職員のカレンダーにブロック必須の時間枠を設定し、その時間枠の設定があることで、チーム入りを求められた場合には14日以内にチームに参加する時間が確保できるのです。この仕組みにより、状況を最もよく把握している人々が、適切なチームメンバーを迅速に招集できるようになります。


4.3 成果の測定と評価


Trivsel+によるインパクトは、インタビュー、フォーカスグループ(小規模な討論会)のほか、さまざまなデータソースの分析も含め、定性的な手法と定量的な手法を組み合わせることにより測定されました。一部の管理職の間では変革に対する抵抗が見られるといった課題が依然として残されてはいるものの、この取り組みは、支援を必要とする若者に対する介入のスピードと効果の向上に寄与する可能性を示しました。

 Trivsel+は、部門間の協働を促進し、縦割りの障壁を取り除くことで、地域社会における若者のウェルビーイングを支援する、より迅速かつ効果的なシステムの構築を目指しています。

 

5 まとめ


5.1 本ケースの特徴的な点


  • プロジェクトの初期段階から部門横断型の協働の枠組みを導入しています

  • 組織にとって根本的な課題の特徴を掴むために3つのステップを活用した点。これらのステップは、まずナラティブ化することを通じて「課題を察知」し、次に課題に関しての「組織的な背景」を明確にし、そして最後に「交差的マッピング」により組織全体で課題がどのように現れているかを理解する、という流れで進められます。

  • 日常的な活動(例:会議)を再定義し、イニシエーターにとってより大きな変革の推進力となるようにしています


5.2 本ケース利用上の留意点


  • CD2でのプロセスは、組織内でその兆候を感じていた課題が、実際には組織の業務方法の中にあるもっと根深い課題であるかもしれない場合に、課題を再評価するためのフレームワークです。この手法は、理論上は誰でも活用できますが、実際には組織がどのように動いているかという仕組みを深く理解している、経験豊富な職員や管理職が最も実施しやすいと考えられます。

  • 本プロセスの実施にあたっては、その課題が自分自身に与える影響ではなく、もっと広く組織にとってどのようなインパクトがあるのかに焦点を当てる姿勢が求められています。

  • 日本では、DX推進部門が組織全体を見渡しながら同様の取り組みを主導する可能性があります。しかし、本ケーススタディの特徴は、これがある事業部の現場から上がってきたボトムアップ型の取り組みであったという点にあります。


5.3 関連する実践ガイド、スキルマップ


  • 実践ガイド 「部門横断型協働のデザイン」

 


 

脚注


[1]英国人作家のF.C.マルビーのブログに、この物語の骨格に関する良記事が掲載されている:2025年1月7日アクセスhttps://fcmalby.com/2014/05/14/narrative-arc-shaping-your-story/ (accessed January 7th, 2025)

​【関連情報】

■取組者/編著者プロフィール

フレゼリシア市/デンマーク(健康福祉部門)


フレゼリシア市: ユトランド半島東部に位置する港湾都市で、人口約4万人を擁する。​1650年に要塞都市として建設され、現在も歴史的な城壁が残り観光名所となっている。​交通の要衝として、デンマーク全土へのアクセスが良好で、産業・物流の中心地としても発展。​また、文化イベントも盛んで、地域コミュニティの活性化に寄与。

■関連スキル

デザイン思考, 部門間協働デザイン, ステークホルダーマネジメント

■関連研究・事業

本コンテンツは、総務省行政管理局「行政運営の変革に関する調査研究」事業で作成されたコンテンツを、同局の許諾を得て掲載しているものです。

■掲載年月日

2025年3月31日

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